今回の記事は、2/7放送の情熱大陸に出演した俵静夫さん(カンタンなプロフィールは、記事の中に出てきます)
情熱大陸では様々な職業の方にスポットを当てますが、今回の俵さんはその中でも稀有な方ではないかなと。
それは、職業だけでなく年齢にも言えるかもしれません。何せ御年80歳。
ただ、極寒の礼文島でトドを追う姿は、その年齢を全く感じさせず、かつカッコイイの一言。
そんな俵さんの情熱大陸について、知り合いがまとめてくれた内容をどうぞ。
北海道礼文島でトドを追う男〜日本版「老人と海」
トド猟師、俵静夫さん。
御年80歳で、氷点下の極寒の海でトドと戦い続けています。
トドは北海道の海を荒らす害獣で、網にかかった魚を食い散らかした上に網までも無残に引きちぎってしまう。
被害総額は年間およそ18億円。礼文島では35年前から駆除対象動物となっています。
ただ、年に一度行われる慰霊祭では、トド猟の安全を祈願し、トドの魂を供養。
そして、その後の宴会でふるまわれるのはトドの肉。
豚肉や牛肉がなかった礼文島では、ドドの肉は昔から貴重なタンパク源として珍重されてきました。
島にトド猟師は25人いますが、俵さんにかなう者はいません。
10発撃って1つも当たらないこともあり、当たる確率としては1割か2割。
「銃口が震えないような体制を整えないと、なかなか当たらない。
パッと呼吸止めた瞬間に、バーンといかなきゃ。
止めてしばらくすると苦しくなって、照準が狂うから」
そう仲間にアドバイスする俵さん。
50年以上変わらずトド猟を続けて、今では島のレジェンドとなっています。
画面に映る俵さんの顔は、とても80歳には見えない!
目は鋭く輝き、刻まれたしわすらも渋みに感じられる、現役バリバリの海の男。
魚を捕る「漁師」は知っていましたが、海でライフル銃を撃つ「猟師」とは、また変わった職業があるものですね。
漁業に深刻な被害を与える害獣なので、駆除する必要があるのですが、ちゃんと供養も欠かさない。
命を奪う仕事をする者としては、供養をすることで、自分の魂も同時に癒やされているのかもしれません。
原点は電気もガスもない島!海の男は家事もバッチリ
トド猟がうまくいかない時に向かうのは、沖の岩場にそそり立つ離れ小島、海鱸(とど)島。
今は無人島になったこの島で、俵さんは生まれ育ちました。
まさに、原点と言える島。
九人兄弟の長男として生まれた俵さんは、中学生で親を手伝い、魚を採り始めました。
トド猟を始めたのは51年前。29歳の時。1964年、東京オリンピックの年。
その頃、日本中が急成長をとげ、その数年後、俵さん一家も電気やガスのある暮らしを求め、礼文島に移り住んだそうです。
今は、奥様と二人暮らし。
4年前に奥様が体調を崩してから、家事もすべて俵さんがこなしているそうです。
トド猟のシーズンは11月から3月の冬の間。
夏の間は、魚介や海草をとって生計を立てています。
電気もガスもない!そして兄弟は九人!(当時は珍しくなかったのでしょうが)
ライフラインは当然のことながら、スマホやネットで必要な情報が得られたり、注文すると欲しい物が自宅に届くのが当たり前となった現代。
当時がどんな暮らしだったのか、今となっては想像もつかないですね。
礼文島というと、ふと吉永小百合さんの主演映画「北のカナリアたち」でロケ地になっていたことを思い出しました。
トド猟師の美学『一発で仕留める』
トドを仕留める場所は、浅瀬の中でも更に浅い岩場近くと決めている俵さん。
この深さなら、水中に沈んだトドを引き上げることができるからです。
仕留めたトドは必ずいただく。無用の殺生はしない。それが俵さんの信条です。
「手負いさせると、自分が苦しむような感じがする。
なんぼ動物でも、手負いして苦しんで跳んで歩くような感じは、見られねぇなぁ」
しばらく風が強く、1週間以上トドをしとめていない日が続き、ようやく風がおさまったある日の猟にて。
浅瀬から少し離れた深みに、群れを発見。
トドが沖に逃げないよう、ゆっくりと船を旋回させ、チャンスを待ちます。
トドとの頭脳戦。
ライフルを手に揺れる船の上でにらむこと1時間。トドが動き始めました。
今だ!
エンジン全開。一気に浅い岩場へと追い込んでいきます。
俵さんの船の波と、トドの波。照準が合うのは一瞬。
バーン!
見事命中。自ら定めた美学に忠実に、一発で仕留めました。
胴回り120cm、しっぽまでの体長180cm。中ぐらいのメスのトド。
自らさばき、50kgとれた肉は小分けにして、島の人と分かち合いました。
80歳。当てにされることが何よりの誇り。
「猟師で満足しきってるからね。海で亡くなったら本望だな」
番組の後半に入るまで残念ながらトドが捕れなかった映像が続き、構成上仕留められた時には映像的に格好がついたな、と思ったのですが・・・
トド。その姿は、家でゴロッとしている自分に似ているようで(笑)
なんとなく、胸が痛みました。
でも、そんなことを言ったら、普段よく食べている牛や豚だって同じ。
みんな命をいただいて生きているということを、改めて思い出した回でした。